セックスは、連続的な線分で理解されます。この線分の両極は、伝統的に「男 male」と「女 female」と言及されてきました。インターセックス intersexとは、この線分のいずれの端でもない、セックスに関する特徴や生殖に関する解剖学的構造のある人たちのことを広くあらわす表現です。なお、このスペクトラムのいずれかの端に近いセックスの人は、「ペリセックス perisex」や「ノン・インターセックス non-intersex」と表現されます。ペリセックスの人たちの身体の発達の仕方と比較すると、インターセックスの人たちの生殖器や、ホルモン、体内外の解剖学的構造、染色体などは多様でありえます。これらの多様性は、出生時のほか、より成長してから確認される場合もあります。[1][2]
コミュニティ[]
インターセックスという表現は、 Richard Goldschmidtによって1917年に提唱されました。[3] その後、1993年にAnne Fausto-Sterlingが使用して広まりました。[4]
インターセックスということばはコミュニティを呼びかける力もあります。インターセックスの人々は多様であり、様々な社会経済的背景、人種、民族、ジェンダー、指向、宗教、政治的思想を持ち得ます。われわれは
1. 多様な性的特徴とともに生きられる経験、
2.これらの多様性がヒトの自然な多様性の一部であるという考え、
3.人は自身の進退について自身が決められるべきだという考え、のもと、連帯します。
ISNAによれば、1.7%の人がインターセックスの特徴でありますが、そのインターセックスの個人の一部は報告されなかったり、診断を受けなかったりします。また、多くの人は、遺伝的診断を受けることなくしては、自身がインターセックスの特徴を持つことに気づきません。インターセックスの人々は、かつて信じられていたほど珍しくありません。これまで透明化されていただけなのです。[5][6]インターセックスの個人は様々なジェンダー・アイデンティティを持ち得、様々なジェンダー表現をとります。もちろんシスジェンダーのインターセックス当事者もいれば、トランスジェンダーの当事者もいます。[7] 多様性の例としては、以下が挙げられます:[1]
また、活動家の長年の努力の結果、インドのヒジュラ・コミュニティは2014年に、第三のジェンダーとしての法的地位を獲得しました。インターセックスの人々の一部は、ヒジュラ・コミュニティの一部として生活しています。[8]
強制的なジェンダー割り当て[]
インターセックスの人々の多くは、性別二元論に基づき、外科手術やホルモン補充療法(HRT)などを強制されています。前者の手術は「インターセックス性器切除(intersex genital mutilation; IGM)」、「インターセックス手術」、「正常化手術」などと呼ばれており、主に2歳未満のこどもたちに施術されます(より成長してから行われる場合もあります)。これらの中には、性ホルモンの分泌腺や生殖器に、本来は不要であるはずの不可逆な施術を行う場合もあります。[1]インターセックスの人々からのリソースや見解、あるいはこれらの手術の副作用を共有されることなく、医学的介入が緊急を要するものであったり、不可欠であったりするものであると医療関係者らによって説明されることもあります。[1][9]国際連合やWHOは、インターセックスの人々に対するこのような同意に基づかない不要な外科手術を、人権侵害であると宣言しています。[10][11]このような施術は、性的機能の低下、妊娠能の低下、心的なウェルビーイングの低下などの副作用をもたらすこともあります。[1]このような同意に基づかない医学的介入の現状を鑑み、インターセックス団体や活動家は自己の身体に対する自律性と自己決定権のために戦っています。[12][13]
一部のインターセックスの人々はCAFAB/CAMAB(Coercively Assigned Female at Birth「強制的に出生時に女性を割り当てられた人」/Coercively Assigned Male at Birth「強制的に出生時に男性を割り当てられた人」)という表現を用います。[14]これは、不同意に不要な医学的介入を受けたことを反映します(ただし、CAFAB/CAMABはこのような意味でインターセックス当事者らにのみ用いられているわけではなく、ペリセクシャルのシスジェンダーに用いられることもあります)。[1]
歴史[]
20世紀半ばまで[]
1930年から1960年にかけて、Hugh Hampton Youngらアメリカの外科たちによって、生殖器に対する手術が開始されました。これらのを多くは、それを求める大人のためのものでした[15]。しかし、1950年代になると、ジョンズ・ホプキンス大学において、インターセックスのこどもたちへ同意のない小児手術が始められることになりました。これは、この類の手術が不要であることを示唆するデータを無視した[16]John Moneyによって発展させられました。Moneyは、彼の信じる「男 male」または「女 female」の身体となるようインターセックスのこどもたちへ強制的にホルモン補充療法や外科手術を行い、押し付けられた性別として育てることが、「正常」な発展のためになると考えました('Optimal Gender Policy')。[17][18] さらに、「男」にするような手術が困難であるという理由で、多くのインターセックスの子供たちは、強制的に女性を割り当てられました。多くの場合、当事者の合意はとられず、その保護者にも十分な説明はなされていませんでした。[16]
Jane/Joan事件[]
Moneyは「ジェンダー中立論 (theory of gender neutrality)」を信じていました。これは、ジェンダー・アイデンティティとは幼児期における社会的な学習にのみ依存し、行動的な介入によって変化を促せる、という考えでした。[19]この理論に基づき、D. R.さんの手術を合意なく行いました。Rさんは1965年に生まれたインターセックスでない個人でした。Rさんは生後8か月にて、割礼の失敗を根拠にペニスの切除をされ、ジョンズ・ホプキンス大学の医師たちおよびRさんの両親はRさんを女性として育てることにしました。Moneyはこの「手術」は成功したとしましたが、実際はD. R.さんは決して女性として自己を認識していない、男性でした。[20]その後、Rさんは自死してしまいました。[16]
20世紀後半以降[]
20世紀後半に至るまで、インターセックスであるということは、「正常化手術」を通じて強制的に「男」か「女」を押しつけられることを意味していました。インターセックスであるということの意味も、ヨーロッパやアメリカにおいて広く理解されていませんでした。 1993年になって、Anne Fausto-SterlingがThe ScienceとThe New York Timesにインターセックスの存在を訴える記事を公開しました。[4]その後、Alice Dreger、Suzanne Kessler、そして先述のFausto-Sterlingらが様々な研究を発表していきました。1900年代から2000年代にかけて、ISNAやinterACTといった団体もうまれました。[16]
医療アドボカシー[]
インターセクシュアリティのしっかりとした医学的研究やインターセックス当事者のアドボカシーは1993年に始まりました。疎の結果、より多くの医療従事者たちが新しいデータを元に、インターセックスの方たちを手助けするための基準を改善してきました。[16]その一方で、こどもに対する強制的な「正常化手術」を廃止するまでには、さらに10年かかっています。合意に基づかないこのような手術を初めて禁止したの国はマルタでした(2015年)。[21]チリもこれを禁止する法案を2017年に成立させました。[22]アメリカにおいては、カリフォルニア州が初めて、子どもに対する非同意の手術を禁じました(2018年)[23]。
2019年には、"Disorder of sex development"という表現をICD-11に導入することに対して、50以上ものインターセックス・アドボカシー団体が共同で反対の声を上げました。声明では、ICD-11の基準では多くの場合子どもの同意なく、そしてジェンダー・ステレオタイプに依存する不必要な外科手術を含む行為が非難されました。団体らは、WHOに対して改善を求めました。[24]
フラッグ[]
インターセックスのプライド・フラッグはIntersex Human Rights Australia (IHRA、旧Organisation Intersex International Australia [OII Australia])のMorgan Carpenterによって、2013年7月につくられました。IHRAはユニークな、つまりこれまでのフラッグのどれとも異なっていて、ジェンダーと通常結び付けられがちなピンクとブルーを避けた旗を目指しました。Carpenterによれば、中央の円は「分断も装飾もないことから、全体性と完全性、そしてわたしたちのポテンシャルの象徴である。わたしたちは未だ身体の自律性と生殖器に関する自己決定権 genital integrityのために戦っており、我々が誰であるのか、そしてどうありたいかを象徴する」。[25]
Natalie Phox (2010)
また、異なるデザインのものがNatalie Phoxによって2010年8月11日につくられ、Wikimediaに投稿された。中央のブルーとピンクのグラデーションは「maleとfemaleの間にあるセックスの多様性」を表し上下のラベンダーは「maleとfemaleの特徴の組み合わせ」であるとされた。しかし、バイジェンダーとして投稿されたことから(Phoxの意図するところはintersexに近いコミュニティのためであった)[26]、バイジェンダーの旗としても使われてしまうこととなった。[27][28]
インターセックス・インクルーシブ・プログレス・フラッグ
現在ではCarpenterによるものが一般的に広まっている。2021年6月6日には、プログレス・フラッグと組み合わされ、インターセックス・インクルーシブなバージョンが提唱された。[29]
差別と偏見[]
医学的・生物学的観点からは、インターセックスはヒトの身体に関する自然な多様性の一部であると考えられるようになってきました。[30][31][32][33]しかし、インターセックスの人々は医療の場において、なお差別や誤解を経験しています。これは、多くの場合、悪意はなくとも、医療関係者らが古い知識のまま有害な行為を繰り返す結果でもあります。[9]
議論[]
現在の科学的な知見に基づけば、インターセックスの方の特徴は、他の生物にみられる「雌雄同体 hermaphrodite」とは全く異なるものであると考えられています。[34]「雌雄同体」の動物はたしかに存在するものの、[35]インターセックスの個人をそう表現するのは、誤っているうえに差別的な語の使用です。[34]
Iを加えるか[]
LGBTQIA+のように、"I"を加えるかについては、インターセックス・コミュニティの中でも賛否のあることです。[36][37]Iを入れるべきだという一つの理由として、クィア・コミュニティと同様な社会的・医療的な透明化をインターセックスの当事者も経験していることが挙げられます。特にインターセックスの方に対する医療においてはホモフォビア、トランスフォビア、ミソジニー、セクシズムなどが強く根底にあり、これらはトランジションしようする方もまた阻む壁となっています。どちらのコミュニティも、身体を勝手に「治療」したり「正常化」したりすることに対抗しています。
一方において、Iを加えることによって、すべてのインターセックス当事者がクィアであるとか、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、または/かつトランスジェンダーなどであるように誤解されるのを懸念する人もいます。[36]この懸念の根底には、インターセックスがアンブレラ・タームとしてのトランスジェンダーの一部であると誤解されるのではないか、という考えに基づきます。また、インターセックスとは身体に関する特徴を表す表現であり、ジェンダー・アイデンティティではないというのも、Iを加えない理由の一つとして言われることもあります。[37][38] また、Iがただ入れられているだけで、実際にはインターセックス・コミュニティにとっての資料や研究につなげられていないという懸念もあります。[36]
メディアにおける描写[]
文学[]
- None of the Above (I.W. Gregorio、2015)は、インターセックスの個人が主人公です。[39][40]
- Born Both: An Intersex Life (Hida Viloria)は、インターセックスの個人による自伝です。[41][42]
映画[]
テレビ[]
- Lauren Cooper(Faking It)はインターセックスのキャラクターです。複数のinterACTの会員の意見を反映しています[45]
音楽[]
- Raven van Dorstはオランダのインターセックスの音楽家です.[46][47]
資料[]
団体[]
- 日本インターセックス・イニシアティヴ
- JNI SAFEGARDEN【Twitter】
- インターセックス・アジア
- Intersex Support and Advocacy Groups[英語]
- interACT[英語]
- Intersex Human Rights International[英語]
- Organisation Intersex International[英語]
- Intersex Society of North America[英語]
ウェブページ[]
- Beyond XX and XY: The Extraordinary Complexity of Sex Determination[英語]
- アジア・インターセックス・ムーブメント公式声明[PDF]
- インターセックス・ファクトシート[PDF]
書籍[]
- コラピント,ジョン. (2000). ブレンダと呼ばれた少年 (村井 智之訳). 無名舎. ISBN: 9784895859370.
- ファウスト-スターリング, アン. (2018). セックス/ジェンダー―性分化をとらえ直す (福, 富護・上瀬, 由美子・宇井, 美代子・立脇, 洋介・西山,千恵子 & 関口, 元子訳). 世織書房. ISBN: 9784866860022.
こちらもご覧ください:インターセックスに関係した書籍紹介|日本インターセックス・イニシアティヴ
参考文献[]
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- ↑ Goldschmidt, Richard. (n.d.). Vorläufige Mitteilung über weitere Versuche zur Vererbung und Bestimmung des Geschlechts., Biologisches Centralblatt Retrieved from https://archive.org/details/biologischeszent35rose/page/564/mode/2up?view=theater [German].
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- ↑ 9.0 9.1 Re-Thinking Genital Surgeries on Intersex Infants
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