クィア (Queer)はalloシスヘテロでない全ての人または彼人らのコミュニティを表します[1][2]。性的指向や恋愛指向、ジェンダー・アイデンティティ、ジェンダー表現を表す語とともに、あるいはそれらの包摂語として、用いられます。[1]また、ジェンダークィアのように、他の用語の一部であることもあります[3] 「クィア」はLGBTQ+やそれの類語で、「Q」として表されるものの一つです(クエスチョニングを表す場合もあります)。[1] 元来は差別語として用いられていたものが取り返された(リクレイムされた)ものであるという歴史的経緯から、LGBTQ+の連帯や抵抗の象徴的な表現として理解されています[4][5]
。ただし、今なお差別的な意味があると考える人もいます。そのため、PFLAG[2] や GLAAD[1]は、そう自己を認識し、自称する人に以外は用いないことを推奨しています。 [1][2]
説明[]
クィアは、いかなる定義も拒絶します。そのため、ここでする説明も、やがて打破されるであろうし、打破されて問題ありません。ここでは、あくまで説明の一例として、次の言葉を引用します:
[Queerであるということ]は、LGBTQIA+のどれか一つの属性を切り出してきたものであるということでも、なんらかの安定した束縛的なアイデンティティをもつということでもない。Queerは決して単一の点ではない。[…]L、G、B、T、Q、I、Aの総称としてのqueerという語は今や広まった。しかし、我らのいうQueer(大文字Qであることに注意せよ)はこれとは異なり、その抵抗の力で定義される――〈普通らしさ normalcy〉に反する全てへの戦いの中で鍛え上げられた、その力に。〈普通らしさ〉とは、白人至上主義であり、資本主義であり、alloシスヘテ規範であり、父権主義であり、単数愛者的であり、able-bodiedである。Queerとは、これ以外の全ての在り方を表す。[6]
歴史[]
差別語として[]
Queerという語は、元々差別的な語として用いられていました。1500年ごろには「異様な、変わっている、エキセントリックな」という意味で用いられていました[7]。19世紀末には、すでにqueerという語は性的な「逸脱」をあらわし、フェミニンな男性や男性と性的関係をもつ男性を指す蔑称として用いられていました[8]。同性愛者の意味では、1922年に確認されています[7]。この頃は、女性らしい表現を示唆したgayに対して、男性らしい表現をする男性同性愛者を表す語として、queerは用いられていました。しかし、gayが広まるにつれて、queerは徐々に姿を消し、第二次世界大戦後ごろには、コミュニティ内でも差別語であるという認識が定着しました。[9]
ことばの再奪取[]
私達はここにいる!私達はクィアだ!!慣れろ!
デモでのコール, クィア・ネーション
差別語として用いられていたqueerは、やがて再奪取(リクレイム)されます。 その初期の有名な例が、「クィア・ネーション Queer Nation」でしょう。クィア・ネーションは1990年3月に、ニューヨークにて、ACT UPのHIV/AIDS運動家らによって結成されました。[10]同年6月には、ニューヨークのプライドマーチにて、クィアよ、これを読めと題されるパンフレットを匿名で配布しました:
ナンデくぃあナノ?
クィア!
なあ、その語を使う必要はあるのか?問題を引き起こしかねない。全てのゲイに、彼または彼女自身の理解がある語だ。ある人にとっては「変でエキセントリックで少し不思議」。いいだろう、悪くないじゃないか。だが、一部のゲイの少年少女たちはこれを嫌がる。彼人らは「変」じゃなくて「普通」であると考えているのだ。そして、他の人らについては、思春期に経験した恐ろしい苦痛を呼び起こさせる表現でもある。クィア。よくてほろ苦い、悪くて抑圧的で痛ましい語。「ゲイ」じゃダメなのか?明るいし、「ハッピー」と同義だろ?お前ら過激派は、いつになったら大人になって、人と異なろうとすることをやめるんだい?
なんでクィアなの?
まあ、確かに「ゲイ」は良い言葉だ。適している場面も多くある。だが、レズビアンやゲイ男性の多くが目が朝、目を覚ますとき、我々は怒りと嫌悪を覚えている。決してゲイではない。だから我々は自らを「クィア」と呼ぶことにした。世界からどのように理解されているか忘れないために。同時に、ストレートによって支配された社会で我々の生活を隠し周縁化させたまま、狡賢くて魅力的な人間である必要などない、と言うために。また、我々はクィアを、レズビアンを愛するゲイ男性や、クィアであることを愛するレズビアンを表すために用いる。
クィアは、「ゲイ」と異なり、男性に限定されない。
そして、クィアという表現を他のゲイやレズビアンに用いるとき、我々は上下関係のないことを示し、(一時的に)個々の差異を忘れることができる。より邪悪な、同じ敵をみているから。そうだ、「クィア」という表現は、確かに尖った言葉でありうる。だが、同性愛者を差別する人らの手から奪い取り、彼人に用いることのできる、冴えた皮肉な武器でもありうるのだ。
クィアよ、これを読め(一部抜粋), Anonymous
2000年代初期にはqueerという語の再奪取はさらに広がりました。これは、ピープル・オブ・カラーやジェンダー・ノンコンフォーミングな個人、あるいはほかの社会的規範に苦しめられる人たちを中心に、なされました。現在では、LGBTQIA+、そしてそれを越えたコミュニティの総称として、「クィア」という語は広まっています。
著名な人[]
- bell hooks ("queer-pas-gay" = "ゲイではなくてクィア")
- Daniela Sea
- Ella Hunt
- Daniel Howell
- Glennon Doyle
参考文献[]
- ↑ 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 GLAAD (n.d.). Glossary of Terms - Lesbian / Gay / Bisexual / Queer , GLAAD Media Reference Guide - 10th Edition Retrieved from https://www.glaad.org/reference/lgbtq
- ↑ 2.0 2.1 2.2 PFLAG (n.d.). National Glossary of Terms Retrieved from https://pflag.org/glossary
- ↑ Cassian (2021-04-01). Gender Census 2021: Worldwide Report , Gender Census . Retrieved from https://gendercensus.com/results/2021-worldwide
- ↑ The Trans Language Primer (n.d.). Queer , The Trans Language Primer Retrieved from https://translanguageprimer.com/queer
- ↑ Scherrer, Kristin (October 1, 2008). Coming to an Asexual Identity: Negotiating Identity, Negotiating Desire . National Center for Biotechnology Information. Retrieved from https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2893352/ on January 22, 2022.
- ↑ anonymous from Reclaim Pride Brighton. (2021). Queerな生を奪い返せ! (anarchist neko訳). Retrieved from https://anarchistneko.wordpress.com/2022/06/11/reclaim_your_queer_fucking_life/
- ↑ 7.0 7.1 Harper, Douglas. (2022). titlepart=queer. (n.d.). Etymonline Retrieved from https://www.etymonline.com/word/queer#etymonline_v_3174
- ↑ Strangers: Homosexual Love in the Nineteenth Century, pp.262. (n.d.) W. W. Norton & Company. ISBN: 9780393326499.
- ↑ Gay New York: Gender, Urban Culture, and the Making of the Gay Male World, 1890-1940, pp.13–16. (n.d.) Basic Books. ISBN: 9780465026210. Retrieved from https://archive.org/details/gaynewyork00geor/page/13
- ↑ Queer Nation NY. (n.d.). Queer Nation NY History Retrieved from https://queernationny.org/history